金庫の性能および用途

耐火性能と耐用年数

ほとんどの金庫は耐火性能を持った耐火金庫です。火事で大事なものを焼失するのを防ぐのが目的です。では、その耐火性能はどのくらいあるのでしょう?なかには「金庫に入れておけばずっと燃えない」と思っている人も多いと思いますが、永久的に燃えないわけではありません。JIS(日本工業規格)により性能基準が定められており、その試験にクリアした金庫は耐火性能を有する金庫となるわけです。

「標準加熱試験」は徐々に燃え広がる火災を想定した試験です。試験方法は省略しますが、この試験の合格基準は「金庫内の最高温度が177度以下」ということと「金庫内の壁全体に貼った新聞紙が変色・劣化などが著しくなく判別が可能」ということです。この状態をどのくらい保てるかで、一般紙用の耐火性能(耐火時間)が決まります。

「急加熱・衝撃落下併用試験」は、急激な発火による温度上昇や爆発による衝撃を想定した試験です。この試験の合格基準は「試験体(金庫)に亀裂が入らないこと」、「施錠状態を維持」、「金庫内の壁全体に貼った新聞紙がということと「金庫内の壁全体に貼った新聞紙が変色・劣化などが著しくなく判別が可能」の3つです。

上記の2つの試験により、金庫の耐火性能が決まります。例えば、上記の試験を1時間クリアすれば「(一般紙用)1時間耐火性能」金庫となります。また一般的な金庫の耐火性能の耐用年数は20年です。この20年と言うのは、経年劣化により耐火性能が落ちてくるからです。もともと金庫の耐火性能は、金庫の耐火材の主成分であるセメント硬化物の中に含まれる結晶水が気化し、その気化熱で金庫内の温度上昇を抑える働きをします。この耐火材が、経年劣化により水分が減少していきます。金庫は永久的に使えるわけでもないし、長時間火の中にあっても燃えないというものではないのです。


耐火時間はどのくらい必要?

金庫の耐火性能はどのくらいあれば良いでしょうか? 家庭用金庫の耐火性能は1時間、2時間のものが大半です。本当にその時間だけで大丈夫なのでしょうか? 平成24年度のデータだと消防機関に通報があってから放水が開始されるまでの時間は、10分以内が全体の60%となっています。日本の消防の優秀さがわかる数値でもあります。鉄筋コンクリート建物の場合、平均60分程度で鎮火できています(大災害は除く)。なので、1時間の耐火性能でもギリギリ中の収納物を守ってくれそうですが、2時間の耐火性能ならかなり安心できるでしょう。


金庫の収納物

「耐火性能があるから金庫に入れておけば大丈夫」となんでもかんでも金庫にしまっている人がいます。前述した耐火性能を考慮する必要があるのはわかったと思いますが、さらに「収納物」についても最低限の認識が必要です。一般用紙や書籍、印刷物などはほとんどの金庫での収納に適していますが、それ以外の収納物は注意が必要です。磁気を使ったテープやディスク、フィルムの類は磁気メディア用の耐火金庫以外での収納はNGです。金庫内に火が回らなくても高温にはなるので、データが壊れたりしてしまうからです。同様に宝石類もNGです。熱による破壊や変色、変形などがあり得るからです。絵画や漆器、骨とう品など高価な装飾品や細工物も金庫への収納はやめたほうが良いでしょう。現金や小切手、手形などの金品や有価証券は防盗金庫での収納のみに適しています。金庫=絶対ではないことを覚えておきましょう。


金庫破りの被害件数

玄関に取り付けられている錠前の進化・改良により、防犯性能は年々高くなっています。昔は素人でも簡単にピッキングで開けられた錠前は現在ほとんどなく、サムターン回しやこじ破りなどの不正侵入対策も進んでいます。ほかにも防犯カメラの設置や個人宅でも大手保障会社と契約をしているところも増えてきました。これらにより、空き巣被害などの侵入窃盗は減少傾向にあります。平成25年度の侵入窃盗の発生件数は107,467件でした。このうち金庫破りの件数は2,257件で全体の2.1%です。一般家庭で金庫を持っている人がどのくらいいるかはわかりませんが、金庫には大切なもの・貴重品が収納されていることが多いので、被害にあったときの衝撃は大きいはずです。それを防ぐには、防盗金庫を使用して「金庫を開けるには時間がかかる」・「金庫を持ち運べない」と諦めさせることが重要です。もちろん金庫が合鍵式かダイヤル式かなどはあまり関係ありません。金庫の開け方通りに開けることはなく、壊したり金庫ごと盗んでいくからです。