多彩なロックシステム

主流はダイヤル式とシリンダー式(合鍵)

金庫のロックシステム(開錠施錠方式)はかなり多くのものがあります。もっとも多いのが、鍵や合鍵を使って開け閉めするシリンダー式ですが、鍵や合鍵の紛失などの心配もあり、最近は鍵や合鍵を持つ必要のない金庫を選ぶ人も増えてきています。シリンダー式と同じくらい多いのがダイヤル式です。文字通りダイヤル番号を順番に合わせて開錠していくものです。ダイヤル式の中にも番号を合わせる回数で防犯性が異なり、100万変換だと4回合わせる必要があるものもあります。金庫を開けるまでの時間がかかる=防犯性が高い、と言えるでしょう。鍵や合鍵を使わないタイプとしては、ICカード式、指紋認証式、テンキー式、指静脈認証式、顔認証式、虹彩認証式などがあります。ただしそれぞれにメリットデメリットもあるため、購入時にはしっかり検討しましょう。


シリンダー式金庫

玄関や建物などに使われているのと同じような構造のシリンダー式金庫は、鍵や合鍵を使って施錠および開錠をします。最初から合鍵は3本くらい付いているものが多く、メーカーや品番によっては合鍵を別発注して増やすこともできます。最近は金庫の合鍵も防犯性の高いものが増えてきており、簡単にピッキングで開かないディンプルタイプのものも多いです。シリンダー式の金庫で合鍵が1本もなくなったり、合鍵を紛失したなど、第三者に開けられる心配がある場合は、シリンダー交換(鍵穴ごとの交換)をできるものもあります。もちろんその場合は、以前の合鍵では開かなくなります。


ダイヤル式金庫

もっとも金庫で多く使われているダイヤル式ですが、組み合わせの数などでセキュリティは全然変わってきます。家庭用のダイヤルだと、番号が固定されたダイヤルも多いですが、業務用金庫だと100万変換と呼ばれる簡単には開けられないダイヤルが使われていることがほとんどです。100万変換式のダイヤル金庫だと、任意にダイヤルの番号を変えることもできます。熟練した鍵師やオートダイヤラーなどを使えば、無傷でダイヤル番号を解読して開けることもできますが、時間がどのくらいかかるかはわかりません。数時間で開くこともあるし、2~3日かかることもあると言われます。

ダイヤル式金庫と言っても、本当にダイヤル番号で開け閉めする金庫はほとんどなく、シリンダーとダイヤルが一緒になったものが大半です。金庫の鍵を開けるときは、シリンダー部分に合鍵をさし、その後にダイヤル錠部分を合わせます。ダイヤルが合ったら最後に鍵穴にさした合鍵を右に回して金庫を開ける、という手順が一般的です。


ICカード式金庫

ICカードをリーダー(読み取り部)に近づけるだけで開けることができます。使えるICカードやIDカードは金庫によって様々ですが、交通機関系カード(Suica、PASMO、ICOCA)や電子マネーカード(楽天Edy、WAON、nanaco)などに対応しているものが一般的です。また、金庫購入時には専用のカードも10枚くらいは付いており、そのカードを使うことももちろん可能です。ICカード式のメリットの一つに、開錠履歴データを確認・管理できることがあります。その手順は金庫によって異なりますが、どのカードでいつ(何年何月何時何分)に金庫を開錠したか、のデータがわかるので、いざという時には役立つ機能です。また電源は乾電池式で配線が不要なのもお手軽です。


テンキー式金庫

0から9までのテンキーを押す組み合わせで金庫を開けます。合鍵を使わずに開けられるため、合鍵の紛失などを防げます。また、暗証番号は簡単に変更できるので、担当者が代わったりしたときに便利です。テンキー単独だけで開けることができる金庫もありますが、業務用金庫などはシリンダー式と一緒になったものも多いです。シリンダー式でレバーのロックを解除して、テンキー式で扉の開放をおこなうものなどです。イタズラ防止機能として、間違った暗証番号を複数回(5回など)入力すると、一定時間操作を受け付けなくなる機能もついていたりします。また、ほとんどのテンキー式は配線不要の電池仕様ですが、電池交換は扉が開いた状態でないと交換できないものもあるので、注意が必要です。


マグロック式金庫

マグロック式金庫は、マグネットの特性を生かし錠前部分にマグネットキーを当てると開けることができる金庫です。鍵(合鍵)の磁気は半永久的で、簡単に合鍵を作ることもできません。ただしシリンダー式の合鍵と同じく、マグロックキー自体を紛失してしまうと開けることができません。


指紋認証式金庫

指紋認証式金庫は指紋リーダー部分に登録した指を置いて認証をおこないます。事前に登録できる指紋の数は金庫の種類にもよりますが、10パターンくらいがもっとも多いです。シリンダー式金庫のように合鍵を持ち歩いたり、ダイヤル式金庫のように番号を忘れたりしても金庫を開けることがメリットです。ただデメリットして、指の状態によっては登録や認証がされない可能性もあります。


指静脈認証式金庫

指紋認証式をさらに進化させた認証システムです。リーダー部分に指を当てることは指紋認証と似ていますが、読み取り方式が異なります。近赤外線を指に透過させて得られる指の静脈パターンで認証をおこないます。指紋認証と違い、指の状態を問わずに認証される世界最高レベルの最先端の認証技術です。指紋認証と違い、偽造やなりすましはほとんどできません。


顔認証式金庫

モニター部分に顔を表示させて認証をおこなうシステムです。複数の金庫管理者がいたりする場合や、合鍵の管理をしなくてよいというメリットがあります。現在、顔認証技術は2D認証と3D認証の2種類があります。2D認証は立体である顔を平面イメージとして取り込むため、立体的に情報をキャプチャする3Dよりは認証技術は劣ります。ただし3D認証は顔認識アルゴリズムが非常に複雑なため、認識速度が遅い、システムが高価というデメリットもありました。そのため、金庫で使われている顔認証の主流は、3D認証の正確さと2D認証の高速処理の利点を生かした2.5次元の顔認証となっています。


虹彩認証式金庫

指紋認証、静脈認証、顔認証に続く最新の生体認証技術が、この「虹彩認証」です。虹彩とは眼球の前面、瞳の周りにある円盤状の膜のことで、この虹彩が伸縮して瞳の大きさを変えて、網膜に達する光の量を調整する機能を持っています。同じ虹彩を持つ人がいる確率は100万分の1とも1兆分1とも言われておりなりすましなどもほぼ不可能です。また虹彩は2歳から生涯ほぼ変わることがないため、再登録の必要もありません。精度の高い認証に加えて高速認証も可能で、現時点で世界最高レベルの生体認証と言えるでしょう。